算数に強くなる!水道方式【水道方式とは何か】

算数を理解するための最善の方法

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歴史と概要

水道方式とは何か

みなさんは「水道方式」という言葉を耳にしたことがありますか?
水道方式は、数学教育協議会が日本文教出版株式会社から、小学校用の検定教科書として出版予定であった「みんなの算数」の編纂過程で1958年に発表されました。
水道方式は遠山啓が提唱し、銀林浩、長妻克亘、岡田進ら数学教育協議会の研究者、教育者を中心に検討され完成されたものです。


みんなの算数4年上巻・教師用指導書(昭和37年3月発行)数教研蔵書
みんなの算数4年上・指導書

※みんなの算数は、1959年の教科書検定では数冊以外は全て検定落ちとなりましたが、改定後の翌年には6年の下巻以外は検定を合格しました。
しかし、教科書は一部でも検定不合格の場合は、学校が採用しませんから、文部省に政治的な力が働いたのではないかといわれています。

水道方式は限られた授業時数内で、無理なく算数が習得できることを目指してつくられました。
水道方式には次のような3つの原理原則があります。

(1)すべての計算過程を最も単純な計算過程に分解する。

例えば\begin{array}{rr} & 135 \\ + &   765 \\ \hline \end{array}のような計算は、

  1. 5+5
  2. 3+6+1(あるいは1+3+6)
  3. 1+7+1(あるいは1+1+7)

に分解して計算を行います。この細分化した1~3のような計算の習得過程を素過程と呼びます。
この素過程が組み合わせでできる235+765のような計算を複合過程と呼びます。

(2)素過程を組み合わせてもっとも一般的で典型的な複合過程をつくる。
3桁のたし算で、「もっとも一般的で典型的な複合過程」は例えばつぎのようなものです。

\begin{array}{rr} & 436 \\ + &   521 \\ \hline \end{array}

どの位にも0がなく、くり上がりのないものです。

(3)「一般的で典型的な複合過程」から「特殊で典型的でない複合過程」へと進む。
特殊で典型的でない複合過程を退化型と言います。下の表では、右の列の計算例が退化型です。
※水道方式の型分けを表現するために、2-9分類法(ニィキュウブンルイホウ)というものとシルエットによる分類が用いられます。下の例では、繰り上がりの位置や回数を表現する2-9分類法により、型分けが表現されています。各型に属する問題の作成では、2や9以外の数も当然のことながら採用します。

[水源地]
\begin{array}{rr} & 222 \\ + &   222 \\ \hline \end{array}
\begin{array}{rr} & 222 \\ + &   220 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 220 \\ + &   222 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 222 \\ + &   202 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 202 \\ + &   222 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 202 \\ + &   220 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 220 \\ + &   202 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 222 \\ + &   200 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 200 \\ + &   222 \\ \hline \end{array}


[くり上がり1回]
\begin{array}{rr} & 229 \\ + &   229 \\ \hline \end{array}
\begin{array}{rr} & 229 \\ + &   209 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 209 \\ + &   229 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 209 \\ + &   209 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 229 \\ + &   221 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 229 \\ + &   201 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 209 \\ + &   221 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 209 \\ + &   201 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 292 \\ + &   292 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 292 \\ + &   290 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 290 \\ + &   292 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 290 \\ + &   290 \\ \hline \end{array}


[くり上がり2回]
\begin{array}{rr} & 299 \\ + &   299 \\ \hline \end{array}
\begin{array}{rr} & 299 \\ + &   209 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 209 \\ + &  299 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 299 \\ + &   201 \\ \hline \end{array}

\begin{array}{rr} & 201 \\ + &   299 \\ \hline \end{array}



水道方式は、水が水源地から各家庭に流れるように型分けがされていたため、仮称で呼んでいた水道方式という名が、いつしか正式にそう呼ばれるようになりました。
水道方式で指導することで、計算ができない子に、いい加減に問題を与えるのではなく、どの型の問題がわからないのかという精密な診断ができ、重点的に指導することができます。
計算は水源地型よりも退化型の方がやさしいですが、最初に水源地型を習得することで、その後は特別な説明を加えることなく退化型の練習を進めることができます。
四則演算それぞれの型分けについては、水道方式詳細でご紹介します。

  • 左側の典型的な型は第1種と名づけられ、具体物や半具体物(タイル)を用いて計算の手続きを説明する必要がある問題と位置づけています
  • 292+292型は典型的な型である第1種の229+229型に属した第2種(例題を示すだけで良い問題)と位置づけられています。
  • 9+99や99+9は299+299の欠位(空位、0)がある第3次退化型と位置づけられています。

※各ページにコメント欄を用意しています。分類についての誤りなどを発見された場合は、お知らせ頂けましたら幸甚です。

当サイトについて

水道方式は、全ての有理数範囲の四則演算の指導順序と計算問題を、世界で唯一、その体系付けに成功した日本が誇るべき数学教育の成果です。
日本の教科書でも部分的にではありますが、取り入れられ始めています。しかし、その全体系については、次の参考文献にあげたような書籍が手元になければ、見ることが叶いません。
当サイトで公開する水道方式の屋台骨である「型分け」と「タイル操作」の情報が、算数数学教育に従事する教育者の皆さんの指導の参考となれば幸いです。
また、スマートフォンやタブレット等でも表示ができるよう、縦長のレイアウトにしました。

参考文献

  • 算数に強くなる水道方式入門 上巻整数の計算 遠山啓 国土社 1961年10月25日
  • 算数に強くなる水道方式入門 下巻小数・分数の計算 遠山啓 国土社 1961年11月1日
  • 新版 水道方式入門 整数編 遠山啓/銀林浩 国土社 1971年9月15日
  • 新版 水道方式入門 小数・分数編 遠山啓/銀林浩 国土社 1971年8月5日
  • 増補 水道方式による計算体系 遠山啓/銀林浩 明治図書 1975年5月(増補版)5版
  • 水道方式 数学教育現代化の基礎2 遠山啓/銀林浩 国土社 1971年6月25日
  • タイルの算数の教え方 整数編 遠山啓序/岡田進著 明治図書 1978年8月
  • 遠山啓エッセンス[第2巻]水道方式 遠山啓/銀林浩・榊忠男・小沢健一 日本評論社 2009年5月30日